実録・団体交渉(7)

事業所の一部閉鎖に伴い、当該事業所の従業員が労働組合を作って団交を求めてきた」という事案をについて解説しています。

 

前回、団交の心構えについて、解説しました。まずは前回の「フクムセンピョウ」の答え合わせです。

フクムセンピョウは、「服務線表」で、郵便局やNTT、国鉄などの公社系で使われていた言葉です。要はシフト表ですから、「シフト表を出せ」と言えば終わる話なのですが、「服務線表も分からないのか!そんなのが労務の担当者をやっているからこんなことになっているのだ。この責任をどう考えているのか。」といった方向に、話が脱線していきます。実際このときも、会社側担当者に対し、「呆れた」みたいなことを言っていた気がします。また、団交時に持ち合わせていない資料を求められることもあります。その際も、「そんな基本的な資料を持っていないのは不誠実団交だ!」うんぬんかんぬん、と続いていくわけです。

 

団体交渉は株主総会などと違って、その場で結論を出す必要もありませんし(この点は、心構えその②です。)、複数回開催することが一般的です。もちろん、会社としても団交に時間を取られるのははがゆいのですが、特に焦る必要はありません。「ないものはない」「分からないものは分からない」と答え、次回までに準備するということでよいのです。そもそも議題や質問も事前に示さず、その場で回答するという方が非常識だとすらいえます。

 

団交の心構えその③は、「最終的に要求を拒絶してもよい」というものです。団体交渉はあくまで交渉です。法律上求められているのは、誠実に団体交渉しなければならないということで、「誠実」=「要求を飲む」ということではありません。

議論を尽くしたけれども妥結には至らなかったということでも全く問題ないということになります。当然ですが、組合側は、自分の主張が正しいと考えていますから、要求を飲まないのは誠実でないからだ、という主張をしていきます。ただ、団体交渉は何が正しいか決める場ではありません。それは裁判所の役割です。組合から求められた情報や資料を可能な範囲で開示し、ある程度の時間をかけて組合の主張に耳を傾け、協議すれば、団体交渉としては目的を達したということになります。団交の打ち切りを恐れてはいけません。団交の終わり方について、次回に続きます。

 

グルメ弁護士のつぶやき

GoToイートのおかげで、弊店もお客様が増えています。お一人のお客様が増えたので、2人テーブルを増やしたり、少し設備投資しました。また、「おとなの週末」11月号にも、「牛ホルモンの三ツ星店」として掲載していただき、厳しい中でも少し活気が出てきた気がします。日本の飲食店は負けません!                     (2020年10月26日 文責:石﨑冬貴)