実録・団体交渉(6)

「事業所の一部閉鎖に伴い、当該事業所の従業員が労働組合を作って団交を求めてきた」という事案をについて解説しています。

 

前回、団体交渉前の準備について、解説しました。今回からは、団体交渉の本番です。

事前の調整に従って、決められた日時場所で団交は始まります。最初の団交は、お互いの自己紹介から始まります。会社側は名刺を渡して終わりですが、組合側は、幹部だけ名刺を渡してきます。あとは、動員された一般の組合員なので、特に名刺もなく、「●●組合の▲▲です。」と名前だけ名乗ります。

 

団交を申し入れているのは組合側なので、通常は、組合側から、団交の目的や要求事項などを説明し、それらの要求、質問に対して、会社側は回答を求められます。この質疑の部分が、まさに団交の本体なのですが、組合側の姿勢によって、穏やかに進むこともあれば、感情をむき出しの怒号が飛び交う修羅場になることもあります。

 

具体的にどのようなやり取りを行うかは、まさにその場の状況で判断していくことになりますので、一義的な答えはありません。ただ、その場で何かしらの回答を迫られますから、株主総会のように、事前準備が非常に重要になります。何の準備もせず「分からない」「拒否する」と回答することは、不誠実団交として不当労働行為になってしまいます。ただ、会社の基本的な姿勢としていえるのは、①分からないことは分からないと答えてよい、②その場で結論を出す必要はない、③最終的に要求を拒絶してもよい、ということです。

 

まずは、①についてですが、組合は、団交中に、非常に細かい質問をしてきます。意地の悪い組合員だと、会社や担当者の知識不足に漬け込んで、細かい法令や裁判例、特殊な用語を出し、「そんなことも分からないのか!」と威圧してきます。

私自身、以前、団交中にいきなり「フクムセンピョウを出せ!」と言われて、恥ずかしながら、すぐに応答できなかったことがあります。耳慣れない言葉なので、そもそも何と言っているのかもよく分かりませんでした。みなさんは「フクムセンピョウ」ご存じですか?答えは・・・次回に続きます(笑)

 

グルメ弁護士のつぶやき

コロナ問題、感染者数はさほど減っていませんが、ようやく落ち着いてきた気がします。日本人は飽きっぽいですから、「もうええわ」という感じなのかもしれません。私も、「正しく怖れる」という姿勢で業務を行っております。おかげさまで、ホルモンマニアも生き残っており、先日、雑誌の取材も来ました。焼肉店はコロナ禍でも比較的強いようです。出版されましたら正式にご案内させていただきます!                                              (2020年9月28日 文責:石﨑冬貴)