民法改正が企業経営に与える影響 第6回 不動産賃貸借と「賃料の支払先」

 2020年4月に施行された改正民法では、不動産賃貸借についてのルールも、わかりやすく整備されています。

 今回は「オーナーが変わった場合の賃料の支払先」についてのお話をさせていただければと思います。

 

 ある不動産を借りていて、そのオーナー(所有者)が変わったら、どこに賃料を支払えば良いのでしょうか?店舗用の不動産を借りていて、そのオーナーが途中で変わるといったことは珍しいことではないと思います。

常識的に考えれば「新しいオーナー」になるのが当たり前です。ただし…これまでの民法だと、なんとこの当たり前のことが明文として規定されていなかったのです。

 

 そのためかつては、「賃料の支払先は前のオーナーなのか新しいオーナーなのか」なんていう問題が裁判で争われた事例もあるのです。

 こういった判例を知っている法律の専門家なら「当然に新しいオーナーに支払うべき」というのはわかるのですが、一般の方からしたら「法律に明確に書いてないのに、大丈夫なのだろうか。。」と不安になってもおかしくないような状況だったのです。

 今回の民法改正では、このようなヘンテコな状態を解消するために、「賃料は新しいオーナーに支払う」ということが明確になりました。

 常識的に当たり前だし、過去の裁判例でもそう判断されていたことが、ようやく法律の明文として規定されたのです!

 

 …正直なところ、「当たり前のことが当たり前のこととして法律になっただけか。。」と感じてしまいますが、一般常識とかけ離れた部分が多い法律の世界で、「当たり前のことが明文化される」というのは、

実は大きな進歩なのだと思います。

※改正民法は2020年4月から施行されました。

 

弁護士の徒然草

新型コロナウイルス禍の影響は、裁判所にも生じています。民事裁判は、通常1か月に1回程度の裁判期日が設定されて進みます。ただ、4、5月の緊急事態宣言下では、裁判期日はほぼ全て延期となりました。緊急事態宣言が明けた現在でもなかなか期日が入らず、ひどい場合は「次回の裁判期日は3か月後」などということもあります。3か月に1度しか裁判期日が入らなければ、審理など進むはずがありません。これは「裁判を受ける権利」の侵害なのではないか?という意見も出てきているほどです。事件によっては、弊所としても、出来るだけ早めに審理を進めてもらうよう、要請させていただきたいと思っております。                                                                                  (2020年7月20日 文責:佐山洸二郎)