民法改正が企業経営に与える影響 第5回 売買契約の「不適合」?(2)

前回の記事では、例えば業務用マスク500枚を発注したケースで、「300枚しか届かなければ200枚を届けるよう追完請求ができる」こと、さらには「その残り200枚が生産不能であった場合は代金減額請求ができる」というところまでお話しました。
 ではこのケースで、そもそもマスクの品質が非常に低かった場合(例えばただの布切れ同然だった場合など)にはどういった請求ができるのでしょうか?
 まず、十分な品質のものを500枚届けるように追完請求をすることが出来ますし、それが出来ないのであれば代金減額請求をすることが出来る可能性が高いです。
 ただ…そもそも1つもまともな製品が届かないのであれば、代金減額というよりも、単純に売買契約自体を解除してしまうことができる可能性が高いのです。その場合、売買契約自体がそもそも無かったことになるのですから、代金を支払う必要もなくなります。

さらに…、発注者からすれば、解除により契約を無かったことにするだけでは不十分なケースもあります。例えば「マスクが届かなかったことが重大な原因となり、予定していた業務を行えず、得られたはずの利益が得られなかった」という事態となるケースも考えられます。その場合、その「得られたはずの利益」の額について、損害賠償請求が出来る可能性もあるのですね。
 ただ、「追完請求」と「代金減額請求」については比較的認められやすい一方で、「解除」や「損害賠償請求」については、裁判所もなかなか容易には認めてくれないようです。いずれにせよ、もし売買契約で「注文した製品が届かない」「届いたが品質が非常に粗悪である」などお困りのことがありましたら、すぐにご相談ください!上記の中からどのような請求ができるのか、一緒に考えさせていただきます。
※改正民法は2020年4月から施行されました。

 

弁護士の徒然草

前々回の記事のこの欄(1月27日)のでは「マスクの季節ですね」などと呑気なことをお話した後に突如コロナウイルスが発生し、前回の記事(4月13日)では「突如マスク争奪戦が勃発してしまっているようですね」とお話しました。そして今や…マスクが逆に市場にあふれかえり、一気にマスクバブルがはじけそうな様子です。この数か月の間に目まぐるしくマスク価値が乱高下し、何やら「市場原理の動き」を非常に圧縮した形で見られたような気分です!何より、無事マスクが手に入る状態に戻り、一安心ですね。                                                                 (2020年6月8日 文責:佐山 洸二郎)