民法改正が企業経営に与える影響 第4回 売買契約の「不適合」?(1)

売買契約、つまり「物を売り買いする契約」は、企業経営上日常的に行われていますね。この売買契約ですが、買主の立場で、契約の内容通りの物がもらえなかった場合はどうなるでしょうか?当然ながら「契約の内容通りの物をください」と言いたいですね。

 

…ただこれまでの民法では、そのような場合の規定が非常に複雑で分かり辛かったのが実情です。条文には「隠れた瑕疵」「所有権以外の権利が設定」「一部が他人の所有物」などとだけ書かれていますが、「何が何やら」という感じです。

 

改正後民法では、シンプルに「契約不適合」の場合は、「追完請求」や「代金減額請求」が出来ると規定されています。これでもまだお堅い言葉ではありますが、要するに「契約の内容通りの物がもらえなかった場合、契約通りの物をくれるよう請求(追完請求)することができ、それが不可能な場合は売買代金を減額するよう請求(代金減額請求)が出来る」ということになります。

 

例えば、業務用マスク500枚を発注したところ、300枚しか届かなかった場合…これは「契約不適合」ですので、残りの200枚をくれるように「追完請求」することができます。この場合は、わかりやすいですね。

 

ではこのケースで、例えば売主側でもマスクを生産できる見込みが立たず、残り200枚を買主に届けることが出来ない場合はどうでしょうか?その場合、買主としては追完請求が不可能なため、代金減額請求をすることができるのです。

 

どれも当たり前のことなのですが、これまで非常にややこしかった部分が、「追完請求」「代金減額請求」という言葉で随分シンプルになったと思います。

 

それでは…このケースで、そもそもマスクの品質が非常に低かった場合(例えばただの布切れ同然だった場合など)には、どういった請求ができるのでしょうか?

 

この点は、次回詳しくお話させていただきたいと思います!
※改正民法は2020年4月、つまり今月から施行されました。

 

弁護士の徒然草

前回の記事(2020年1月27日)では「マスクの季節ですね」などと吞気に言っていました。が…その後突如コロナウイルスが発生し、今や各地のドラッグストアなどでマスク争奪戦が勃発してしまっているようですね…。私も、マスクが買えません。背に腹は代えられないので、1枚のマスクをウェットティッシュで洗いながら2~3日使っています。「1日1枚」という当然の状況が戻るまでには、あとどれくらいかかるのでしょうか…?

                                                                                                          (2020年4月13日 文責:佐山 洸二郎)