離婚問題の基礎(15)~悪意の遺棄~

 今回は、民法770条1項2号に規定されている離婚原因のうち「悪意の遺棄」について書きたいと思います。

 「悪意の遺棄」とは、正当な理由のない同居・協力・扶助義務を放棄することをいいます。
 「悪意」という言葉にあるように、倫理的に非難されるような行為であることが必要です。

 

 よくあるのが、夫が妻や子供を放置して、家出をして、生活費などの経済的な援助を一切しない場合です。ひどい場合には、失踪して行方知れずになることもあります。

 

 実務上では、夫が一方的に家を出て、その後、住んでいるところはわかるけども音信不通であったり、生活費を払ってくれないなんてことはよくあります。 私が扱ったのでも、夫の海外転勤に家族で同行していったが、行った先で家族関係が悪化し、夫だけ日本に転勤で戻ってきたのに、家族はそのまま海外に居続けた、というのもありました。

 

 離婚訴訟においても、「悪意の遺棄」を主張することはよくあります。
 ただ、別居に至った経緯自体に争いがあったりすると「悪意」の評価は難しいですし、別居期間が長期にわたる場合はそれ自体が独立した離婚原因になりますので、実務上、「悪意の遺棄」として認定されるケースは多くありません。

 

日々の雑感

娘が生まれて半年が経ちました。「ハーフバースデイ」といって祝うところもあるらしいですね。そんな娘も、顔はパパ似だとよく言われますが、私としてはいまいちピンときていませんでした。ところが、先日、前髪が目に入らないように妻が娘の前髪をぱっつんと切ったところ、子供のころ母に前髪を切りそろえられた私にそっくりだったのです。
これは似ているということも認めざるを得ないなと思う一方、私に似た娘が将来どうなるのだろうかとふと心配にもなりました。                                    (令和元年7月9日 文責:下田)