企業経営にまつわる刑事事件 第8回 窃盗(1) 自分の物に対する窃盗罪?

 痴漢・名誉棄損に続いて、今回からは、3本立てで窃盗罪についてのお話をさせていただければと思います。

窃盗罪はある程度一般の方にも馴染みのある言葉かと思いますが、ご想像の通り、いわゆる「泥棒」「万引き」や「スリ」などをお堅く表現した用語です。

 

 人の家に勝手に入って泥棒をする行為は窃盗罪です。コンビニでおにぎりを万引きする行為もまた、窃盗罪です。満員電車で近くの人のポケットの財布にスリ行為をすることも、窃盗罪です。

 

 では「貸していた物を勝手に取り返してしまう行為」は窃盗罪になるのでしょうか?

 

 常識的な感覚からは「自分の物を取り戻す行為が窃盗罪にあたるはずはない」と思ってしまいます。しかし…。

 

 実際にあった例をご紹介させていただきます。経営者さんが、従業員さんに貸していた物がなかなか返ってこないことから、その物を自分で勝手に持って帰ってしまったというケースです。

 

 …実は、この行為は窃盗罪となってしまう可能性が十分にあるのです。

 

 少しややこしい話になってしまいますが、刑法は「所有」よりも、まず「占有」を保護していると言われているのです。今回のケースでは、物の「所有」者はたしかに経営者さんですが、その「占有」者は従業員さんということになるのです。

 

 したがって、刑法上は、まず従業員さんの、物に対する「占有」が保護されるということになっているのです。

 

 何だか中々納得できない理屈ではありますが、その根底には「一度貸した物は、例え自分の物であっても『返すようにお願いして』返してもらうべき。」という考え方があるようです。

 

 物を貸すという行為も、なかなか重要な責任が伴うものなのですね。

 

 

弁護士の徒然草

 だいぶ暖かくなってきており、暑がりの私からするとコートが不必要な日も増えてきました。そして、それに伴って花粉も飛散し始めたようですね。花粉症は「コップの水が満タンになるように、その人の生涯における花粉許容量をオーバーしたら、一気に発症する」などと言われることがあるようですね。私は今まで特に花粉症ではなかったのですが、ここのところ異様に目が痒く、鼻もむずむずします。くしゃみも、突発的に連続で出たりします。み、認めたくないのですが…まさかこれは「コップの水が満タンになった」ということなのでしょうか?

(平成31年3月18日 文責:佐山 洸二郎)