正規・非正規の格差問題

 今号は、正規と非正規の格差問題について取り上げます。平成30年6月4日、最高裁判所が注目すべき判決をしました。最近話題の正規社員と非正規社員の格差についてで、正規社員と非正規社員で、支給される手当に差があってもよいのかという問題です。

 

 前提からいうと、平成25年の法改正で、正社員と期間雇用の非正規社員との間で、不合理な差があってはならないという条文が設けられました(労働契約法20条)。不合理かどうかは、職務の内容、異動や配置変更の有無、その他の事情を総合的に考慮すると定められています。このような法律はありましたが、実際にどのような差が違法になるかどうかまでは裁判所の判断が待たれており、この度、(あると思います程度ですが)その統一的な判断が出たことになります。

 

 結論だけ抜き出すと、「通勤手当」「無事故手当」「作業手当」「給食手当」「皆勤手当」については、職務の内容によって差が生じるものではないということで、非正規社員への支払いが命じられました。他方、「住宅手当」については、正社員には引っ越しを伴う配置転換があるため、不合理な格差には当たらないと判断されています。

 

 ただ、最高裁は、具体的な手当ごとにその趣旨を個別に考慮すべき、としていますので、「通勤手当」という名前なら絶対に非正規にも払わなければならない、ということではありません。差を設けるのが合理的かどうか、個別に検討しなければならないわけですね。

 

 実際に、去年から今年にかけて、日本郵政の非正規社員が起こした訴訟では、地方裁判所ですが、一定の住宅手当の支給を命じています。まさに個別の事案によって異なるということが分かると思います。

 

 働き方改革にからめて、現在、国会でこの点も議論されていますので、現在の社内の支給状況を改めて、精査してみてはいかがでしょうか。また、今月の弊所主催セミナーでも、代表弁護士の大山が解説しますので、ぜひお時間合えばお越しください! 

 

グルメ弁護士のつぶやき 

 沖縄でソーキ(骨付きの豚の角煮)を食べ過ぎて吹き出物ができた石崎です。北は北海道、南は沖縄まで色々と訪れており、フィジカルが気になってきたこの頃ですが、この度、おかげさまで、書籍を出版いたしました!「なぜ、飲食店は一年でつぶれるのか?」ということで、飲食店における法律の重要性を解説しております。Amazonでも売っておりますので、もしご興味ございましたら、ご笑覧ください。ここだけの話、もう少しで初版2000冊に到達するみたいなので、本棚の肥やしでも構いません!清き一票を(笑)               (平成30年6月4日発行  文責:石﨑冬貴)