副業の法的問題 (5) ~副業と就業規則~

前回は公務員の副業について説明しました。公務員の場合、副業は原則として、法律で禁止されているんですね。しかし、一般の民間企業の場合には、そのような法律はありません。以前説明した通り、労働契約というのは、働く時間を企業に提供し、それに対する対価を貰う契約です。そうであるなら、労働時間以外には何をしても自由なはずです。徹夜でテレビゲームをしてもよいなら、夜中に副業してもよいことにならないと、理屈が通らないのですね。しかし現実には、多くの民間企業で副業は禁止されています。多くの企業で、就業規則に、副業禁止の規定が置かれているのです。

 

就業規則というのは、言うまでもなく、会社と従業員の労働契約です。沢山の従業員がいる会社で、一人一人と個別の契約をさせるのではなく、一定の重要な労働契約の条件については、あらかじめ決めておこうというのが就業規則です。

この就業規則に関して、厚生労働省がモデルを作っています。そのモデルの中に、従業員に対する禁止事項も定められているんですね。その一つが、「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」だったわけです。副業をするには、会社の許可を得ないといけないということです。ただ、表立って「許可」を求めてきても、会社としてもなかなか承認はできませんでしたよね。そんなわけで事実上副業は禁止されていました。さらに、この規定に反した場合、懲戒の対象になることも、モデル就業規則で決まっていたのです。

 

厚労省は、このモデル就業規則を新しくするといっています。副業が原則自由であり、会社にとって具体的に不利益を生じるときにだけ禁止できることを明確にするというわけです。これにより民間企業の、副業に関する就業規則の定めも、影響を受けることになると予想されているのです。

 

(平成29年10月10日発行 文責:大山 滋郎)