退職に関するトラブルについて(21)

近年、「退職代行業者」を通じて退職の意思表示がなされるケースが増えています。
会社としては、突然見知らぬ業者から連絡が入り、「本人は出社しません」「今後は直接連絡しないでください」と告げられ、対応に戸惑う場面も少なくありません。

 

まず押さえておくべきは、退職の意思表示は必ずしも本人から直接行われる必要はない、という点です。代理人を通じた意思表示も有効とされ得るため、「本人から直接聞いていないから無効」といった対応は実務上通りにくいのが実情です。

 

もっとも、退職代行業者には大きく二つの類型があります。弁護士が関与するものと、民間業者です。弁護士であれば交渉権限を有しますが、民間業者は原則として意思の伝達にとどまります。弁護士以外の者が報酬を得て交渉を行うことは、法律上制限されているため(いわゆる非弁行為)、民間業者が交渉に踏み込む場合には問題となる可能性があります。

 

企業としては、まず相手が弁護士かどうかを確認することが重要です。そのうえで、退職日や最終出勤日、貸与物の返却方法、業務引継ぎの扱いなどについて、書面やメールで整理し、記録を残しながら対応を進める必要があります。

また、「直接連絡をしないでほしい」と伝えられることもありますが、業務上必要な範囲での連絡や貸与物の返却要請まで直ちに違法となるわけではありません。ただし、過度な連絡や心理的圧力と受け取られる対応は、かえってトラブルを拡大させるおそれがあるため、慎重な対応が求められます。

 

退職代行は一時的な流行ではなく、今後も一定数存在し続けると考えられます。
企業としては、これを例外的な出来事と捉えるのではなく、想定される一つの退職パターンとして位置付け、あらかじめ対応方針を整理しておくことが重要といえるでしょう。

 

日々の雑感

先日、小学2年生になった娘が、初めて一人でお使いに行ってくれました。無事に帰ってきた姿を見てほっとしたのと同時に、これをきっかけに、これから一人でできることがどんどん増えていくのだろうなと感じました。うれしい気持ちと、少しさびしい気持ちが入り混じる一日でした。                                                       (2026年4月30日  文責:下田 和宏)