部下を?ったらパワハラですか?(2)
「部下を指導しただけで、パワハラと言われたらたまらない」というのは、非常にもっともな意見です。
その一方、「指導」の名の下に、かなり酷いパワハラが現実に行われていたのも事実です。
判例で問題になった事案で、パワハラを繰り返した上司を会社が解雇したところ、その人が解雇無効を訴えてきたというものがあります。
ただ、この人の場合、多数の部下に対して「パワハラ」といわれる行為をしてきたとのことです。常識的に考えて、「問題社員」がそんなに多数いるはずはないので、この人の方がおかしいのではと思わざるを得ない事案です。
実際、判例に出て来るこの人の「指導」というのは、かなりメチャクチャでした。部下に対して「お前は四角い。丸でないとだめだ!」と「指導」して、紙に□と〇を延々と書かせたりしたそうです。裁判所も、「こんなものは指導とはいえない」と、厳しく指摘していました。
さらに考えてみますと、そもそも会社自体、この人を持て余して、解雇に踏み切ったと言えます。今の時代、こういう人は会社内でも淘汰されていくのでしょう。
その一方、本当に問題ある社員に対して「厳しい」指導をしている上司に対しては、会社としてもそこまで強い対応は取らないのが普通です。あまり大きな声では言えませんが、私が会社員をしていた20年くらい前までは、問題社員を上司が「厳しく指導」した結果、その社員が退職した場合、「良くやってくれた! よくぞ辞めさせてくれた」と、会社も他の社員も評価していたという現実があります。この辺の感覚は今も残っていて、「厳しい指導」が「パワハラ」にあたりそうな場合でも、それを行った上司を厳しく処分できないということをよく聞きます。時代が変わってきた中で、昔の基準ではダメだと、多くの企業が気付いています。
しかし、それならどうすれば良いのか、悩んでいるのが現状でしょう。その辺の解決策のヒントを、次回以降考えていければと思います。引き続き宜しくお願い致します。
(2022年3月7日 文責:大山 滋郎)
- 【下請・フリーランス新法】「買いたたき」とならないようにするための協議とは
- 退職に関するトラブルについて(9)
- 管理監督者をめぐる問題④
- 外国人雇用の法務(14)
- 【労働裁判例を知り、会社を守る!】第4回 同一の労働には同一の賃金を?
- 【下請・フリーランス新法】価格交渉をしないだけで「買いたたき」??
- 退職に関するトラブルについて(8)
- 管理監督者をめぐる問題③
- 外国人雇用の法務(13)
- 【労働裁判例を知り、会社を守る!】第3回 社内のセクハラを放置すると会社にも責任が生ずる?
- 【下請・フリーランス新法】フリーランス新法と下請法の違いとは②
- 退職に関するトラブルについて(7)
- 管理監督者をめぐる問題②
- 外国人雇用の法務(12)
- 【労働裁判例を知り、会社を守る!】第2回 痴漢で罰せられた従業員でも解雇は出来ない?
- 【下請・フリーランス新法】フリーランス新法と下請法の違いとは①
- 退職に関するトラブルについて(6)
- 管理監督者をめぐる問題
- 外国人雇用の法務(11)
- 【労働裁判例を知り、会社を守る!】第1回 準備時間も労働時間?
- 【下請・フリーランス新法】フリーランス新法が適用される「特定受託事業者」とは?
- 退職に関するトラブルについて(5)
- 助成金に関する問題④
- 外国人雇用の法務(10)
- 産業医とは?
- 【下請・フリーランス新法】フリーランス新法は「保護法」ではない!
- 退職に関するトラブルについて(4)
- 助成金に関する問題③
- 外国人雇用の法務(9)
- 傷病手当とは?