【事業承継編】非上場株の評価ルールが刷新へ。国税庁の検討会議が始動(3)

前回は、上場会社の株価を参照する「類似業種比準方式」への批判が高まるなか、少なくとも純資産ベースで評価すべきではないかという意見がある、というお話をしました。

今回は、それでも話は単純ではない、という点を見ていきます。
そもそも、純資産ベースの計算は、「コスト・アプローチ」と呼ばれるものです。これは、会社のプラスの財産から負債を差し引いたものを企業価値と考える発想です。これだけ聞くと、わかりやすいですよね。

ただ、この発想には、根本的な視点が抜けています。それは、「株主は、この企業価値をどうやってお金に変えるのか」という点です。
コスト・アプローチを重視する立場からは、基本的に、「今すぐ清算したときの価値が、最低限の企業価値になる」と説明されます。清算の際には残余財産分配請求権があるため、株主はその価値を持っている、という考え方です。しかし、一般的な純資産方式では、帳簿上の金額をそのまま使うのか、時価に置き換えるのかは問題にしても、清算にかかるコストを差し引かないことが少なくありません。残余財産分配を想定するなら、本来は清算コストを差し引く必要があるのではないか、という問題が出てきます。

このように、清算コストを差し引いた純資産方式は、とくに「清算価値法」と呼ばれます。
在庫品などをすぐに売らなければならないとなれば、かなり安く買い叩かれることになります。

従業員に退職してもらうためには退職金の支払いが必要になることもありますし、さらには税金もかかってきます。
株主が有している「最低限の企業価値」は、本来は清算価値ですが、この清算価値がどのくらいかを測る手段は、実は未だに確立していません。そのような事情もあり、簡易的に、清算価値を考慮しない時価計算による純資産方式を、相続税法上の評価の一部として採用しているというのが実態なのです。

 

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みなさま、暑いですので、体調にはお気をつけください。                                       (2026年8月10日  文責:杉浦 智彦)