【労働裁判例を知り、会社を守る!】第18回 妊娠を理由に管理職から降格させたら違法に・・・?

今回は、妊娠を理由に管理職から降格させてしまったことが違法かどうかが争われた裁判例(広島高裁平成27年11月17日判決)をご紹介いたします。
これは、ある病院で働いていた従業員が、妊娠をきっかけに管理職(副主任)から降格させられたことを理由に、病院に対して、降格は無効であることや、本来もらえるはずだった手当の請求をした訴訟です。
マタハラ(マタニティ・ハラスメント)訴訟として当時マスコミにも取り上げられ、最高裁判所まで争われた有名事件です。
裁判所は、降格は無効であり、かつ、本来支給されるはずであった手当も支払われるべきであると判断しました。
まず前提として、男女雇用機会均等法では、妊娠や出産を理由とした不利益な取り扱い(いわゆるマタハラ)をしてはならないと定められています。
もちろん、妊娠・出産を理由とした配置転換等が全て禁止されているわけではなく、あくまでハラスメントと言えるような不利益な扱いが禁止されているのですね。

その一つの判断基準となっているのがこの裁判例です。
この裁判例の判断のポイントは、①従業員からの承諾があったとは言えなかったこと、②降格の必要性や理由の説明が不十分であったこと、③降格に伴う給与減額などの不利益が大きかったこと、などが挙げられます。

 

この裁判例のケースでは、妊娠したからといって副主任という管理職から降格させなければならない業務上の理由や必要性が乏しく、かつ降格についての従業員への説明が十分になされておらず、当然従業員側からの承諾も明確になされていなかったのですね。
また、降格に伴い手当も無くなるため給与の減少も大きく、さらには「出産と育児休業後も、副主任への復職を行わなかった」という点も一つの決定打になったようです。

 

以上のように、妊娠を理由として業務内容や配置転換をするのであれば、そうしなければならない理由が必要で、さらにそれを従業員にしっかり説明した上で出来れば明確に承諾を得ることが必要ということですね。

 

弁護士の徒然草

「出産を機に会社で働き辛くなる」ような環境だと、それに伴って「では子供を産むのは止めた方が良いかな」という考えが出てくるのは当然のことで、選択肢が狭まってしまいますよね。
少子化自体の是非は簡単に結論を出せないですが、少なくとも選択肢を狭めてしまうことを防ごうという考え方が労働法にも表れているのは、とても良いことですね。                                                     (2026年5月12日  文責:佐山 洸二郎)