知って得する労働法改正①
今年の4月から新規入所いたしました、弁護士の高橋と申します。どうぞよろしくお願いいたします。私からは労働に関する法律等の改正についての新たなシリーズを書いていこうと思っております。
「企業は人なり」という松下幸之助氏の言葉にもあるように、労働者は企業に取って欠かせない存在である一方、時代や人の価値観の移り変わりにより企業が労働者をどう取り扱うべきかの法規制等はめまぐるしく変化しています。そんな中での一つの目印として経営者の方々の一助となれば幸いです。
第1回目は、労働条件明示の義務の範囲の改正についてご説明します。
令和6年4月1日から、労働基準法等が改正され、明示すべき労働条件の項目が拡充されました。以下概要です。
対象 | 明示のタイミング | 新しく追加される明示事項 | |
1 | 全ての労働者 | 労働契約締結時と有期労働契更新時 | 「就業場所の変更の範囲」「業務変更の範囲」 |
2 | 有期労働契約者 | 契約締結時と更新時 |
「更新上限の有無と内容」 「更新上限を新設・短縮した場合にその理由」 |
3 | 有期労働契約者 | 無期転換ルールに基づく、無期転換申込権発生時 |
「無期転換申込機会」 「無期転換後の労働条件」 「無期転換後の労働条件決定に当たり他の正社 員とのバランスを考慮した説明」 |
たとえば雇い入れ直後は「勤務地:本社」だとしても、「将来的に全国の支店へ転勤の可能性がある」などといった、配置転換の可能性を具体的に記載する必要があります。業務内容についても同様で、「営業職」などの現在の業務だけでなく、「将来的に管理業務を含む」など、変更の可能性がある範囲を明示しなければなりません。
今回の改正に違反した場合には、30万円以下の罰金を受ける可能性があり、企業の信用問題につながるおそれもあります。
なお、今回の改正は、令和6年4月1日以降に新たに締結される雇用契約に適用されるもので、既に締結済みの契約を直ちに修正する義務はありません。しかしながら、更新時や今後新たに労働契約締結する際は明示する義務があるほか、上記1・2は募集時にも明示する義務があります。
厚労省HPにおいて、改正に対応した労働条件通知書のひな形が公開されていますので、ご確認頂き、今後の労務トラブルを防ぐためにも、採用・人事部門と連携して、丁寧な情報提供を心がけることが重要です。
後書き
業務開始前の3月に、フィンランドへオーロラを探す旅に出ておりました。運良く大きなオーロラに出会えたので、これも弊所と顧問先企業様の未来は明るいという吉兆と捉えて、業務に邁進して参りたいです。
(2025年6月18日 文責:高橋 涼馬)
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