第135号 相続の基礎の基礎(10)~遺留分~

今年1年続けてきました、相続の基礎の基礎も、今回10回目で最終回です。最後は、遺留分について説明します。

遺留分というのは、一定の相続人であるなら、たとえ亡くなった人の意思に反しても、遺産がもらえる制度です。

 

例えば、妻と二人の子供を残して、夫が亡くなるような場合がありますね。特に何もなければ、相続分は妻が2分の1、子供が4分の1ずつになるはずです。しかし、一人の子供のことは絶対に許せないので、「財産を一切残したくない!」なんてことがあります。そこで、妻ともう一人の子に、2分の1ずつ財産を残すなんて、遺言がでてきます。

残された子供が、納得して引き下がれば終わりですが、通常はそうなりません。これはおかしいということで、遺留分を求めて訴えてくる場合が多いのです。遺留分の制度の下では、子供は、本来もらえる相続分の半分(つまりこの場合は8分の1)はもらえることになっているからです。うちの事務所でも、何回か裁判をしましたが、これはもめますね。

そもそも、遺言のうち相当数は、かなり怪しい内容です。どちらかの子供が親を人質に取り、他の兄弟には会わせもしないなかで、あとから遺言が出てきたなんてケースは相当数あります。

 

うちの事務所が関与して遺言を作成したら、それからしばらくしてから、うちの依頼者が油断したすきに、全く別の遺言がいつの間にかできていたなんてこともありました。当然、当方の依頼者には一銭も残さないという遺言です。

こういう遺言があれば、意地でも「遺留分」で対抗したくなるという気持ちも当然でしょう。相続は、単なる法律の問題ではなく、生の人間の感情がぶつかり合うだけに、弁護士としても非常に気を遣う分野となっているのです。