不当解雇に関するご質問

 

Q1 即戦力となる社員を採用したいと考え、同業他社での勤務経験と実績のある人間を、高待遇で中途採用しましたが、能力不足だったので解雇したところ、不当解雇と主張されました。このような場合でも、不当解雇になるのでしょうか。

A1

一般的に、能力不足を理由に社員を解雇することは、非常に難しいです。

解雇する前に会社が、その社員の能力を改善・向上させる取り組みや、配置換えなどの措置を、十分に行ったのか、という点が厳格に判断されるからです。

その一方、一定以上の能力があることを前提として、高待遇で中途採用された社員の場合は、通常の社員よりは、解雇が認められやすいです。

ただ、そのような解雇をするためには、採用時に、成果目標が具体的な数値として定められているなど、会社の求める能力を明確にしておく必要があります。

そこで、即戦力を期待して中途採用する場合には、以下のような対策を取りましょう。

① 雇用契約書に、会社が求めている知識・技能・技術などの水準を具体的に規定し、それらが満たされなかった場合には退職を求めることで合意しておく

② 3年程度の有期雇用契約にする(能力不足の場合は、雇用契約を更新しない)

③ 試用期間を長めに設定し、正社員として採用する場合は、試用期間終了時に改めて選考することで合意しておく

 

 

Q2 違法行動を起こした社員がいます。懲戒解雇事由に該当することが明らかなので、懲戒解雇しても、問題ないですか。

A2

違法行為を起こした社員でも、法律上容易に解雇できるものではありません。

まず、会社から見れば相当の違法行為だと思えても、なお客観的にみると解雇の理由には足りないとされる場合があります。

さらに解雇は、厳格な手続きに則って行われる必要があります。

仮に、客観的には解雇の理由があったとしても、解雇に至る手続きが完全に履行されていない場合には、解雇が認められない場合もあり得ます。

たとえその場では解雇を認めている場合でも、後から解雇の有効性を争ってくるようなケースはあり得ます。

そのようなリスクをなくすために、解雇というやり方ではなく、できる限り当事者との合意による退職という形をとることが望ましいと言えます。

 

 

Q3 うつ病になったと主張して、会社を休み続けている社員を解雇することはできますか。

A3

うつ病の原因次第です。

業務上の病気のために出勤できない社員については、療養期間及びその後の30日間は、解雇することが法律上禁止されています。

そのため、うつ病の原因が、上司のパワハラなどにあるのであれば、業務上の病気ということで、療養期間及びその後の30日間は、解雇することができません。

一方、私的な病気のために出勤できない社員については、このような禁止規定はありませんが、回復見込みがあるのであれば(一時的なものであれば)、解雇が無効になります(不当解雇になります)。

そのため、うつ病の原因が、私生活上でのトラブルにあるなど、私的な病気であり、かつ、回復見込みがないのであれば、解雇ができます。

 

 

Q4 解雇した社員が、解雇無効を争う裁判を起こして、労働審判や裁判で解雇が無効と判断された場合、どうなってしまうのですか。

A4

解雇が無効になるので、その社員は、復職することになります。

そして、(無効な)解雇日から、復職までの期間分の賃金を、支払わないといけません。この間、その社員は、一切仕事をしていないにもかかわらず、です。

さらに、悪質な解雇事案では、「付加金」として、復職までの期間分の賃金と同額を、プラスアルファで支払わされることもあります(付加金は、通常訴訟で支払いを命じられる制度です。労働審判では、支払いを命じられることはありません)。

 

 

Q5 長年にわたって契約を更新していた契約社員について、来年は更新しないことを伝えたところ、不当解雇だと主張されました。契約社員の契約を更新するかどうかは、会社の自由でないでしょうか。

A5

期間の定めのある有期労働契約は、更新しない限り、期間満了により終了するのが原則です。

しかし、長期継続雇用を期待させるような言動(「真面目に働いていれば契約期間が満了しても解雇されない。」など)を会社が行った場合は、雇い止めが出来なくなる可能性があります(不当解雇のように、扱われてしまいます)。

また、特にそのような言動がなくとも、更新が何回も行われた場合も、雇い止めが認められないリスクが増加します。

厚生労働省は、更新が3回以上行われた場合において雇止めを行うのであれば、契約期間満了の30日前までにその旨の予告を行うよう要請しています。

従いまして、3回以上の更新は、雇止めが難しくなる一つの目安になると思われます。

雇止めができなくなる事態を防ぐためには、以下のような対策があります。

① 更新の可否の基準及び契約期間を、契約書において明確に規定する。

② 更新の度に契約書を作成する。

③ 更新の回数を3回までとするなど、ルールを明確にしておく

 

 

Q6 会社の業績が悪化した場合、リストラとして、社員を解雇することができますでしょうか。

A6

業績が悪化したからといって、自由に社員を解雇することはできません。

このような場合の解雇を、「整理解雇」といいますが、整理解雇をするためには、以下の4要件を満たす必要があり、そのハードルはかなり高いです。

① 人員削減の必要性があること

② 会社が解雇を回避するための努力を尽くしたこと

③ 解雇される社員の選定が合理的なものであること

④ 組合や社員に対して解雇に関する協議や説明を行ったこと

 

 

Q7 整理解雇の4要件の内、「① 人員削減の必要性があること」とは、どのような場合ですか。

A7

経営が悪化していることです。会計資料や、整理解雇の決定前後の役員報酬の資金状況、毎月の負債返済額など、客観的資料から見て、経営が悪化しているといえることが必要です。

整理解雇の4要件の内、「② 会社が解雇を回避するための努力を尽くしたこと」とは、どのような場合ですか。

整理解雇前に希望退職募集を実施していること、新規採用を停止していること、経費削減の取組状況、賃金カットなどの支出削減努力、売上増への具体的取組などが必要になります。