契約更新拒絶
更新拒絶実例
契約社員のような、期限の決まった有期雇用契約の場合、期限が満了すれば、いつでも契約を更新せずに辞めさせて構わないと思っている会社が多いのが実情です。この事例も、ある従業員に、期限の満了にともなって、来期は契約を更新しないと告げたことからトラブルが起こりました。
この従業員は、仕事の進め方にかなり問題があり、会社内外から多くの苦情が寄せられていました。会社としては何度も指導したのですが、なかなか改善されなかったのです。そうした中で、折からの不況により、この従業員が所属する部門の予算の大幅削減が決まりました。
そこで、会社は、この従業員に、来年度の契約更新はないことを告げたのですが、これが不当な解雇だとして、労働審判になってしまったのです。
有期雇用契約は、原則としては、期間の満了にともなって、契約は終了しますから、更新しなくとも問題はありません。しかし、複数回更新していたり、ある程度の期間にわたって更新を続けていたりした場合で、従業員に雇用継続の期待が生じていたときなどは、従業員からの雇用継続の申し出を拒絶することはできないのです。
私たちは、従業員に雇用継続の期待を抱かせるような会社側の言動はなかったことや、この従業員が行っていたの業務は正社員とは違うといったことを主張しました。
この事例では、3年半にわたり、すでに3回の更新を続けていたことなどから、一回目の労働審判では、審判委員から、会社にとって厳しい和解案の提示がなされました。厳しい状況でしたが、二回目の審判に向け、会社がどれだけ財政的に厳しい状況にあったかなどを準備書面に記載し、提出しました。
その結果、二回目の審判では、前回よりも会社に有利な和解案が提示され、無事に和解が成立しました。
変えることのできない事実を前に、厳しい状況となってしまっても、諦めずにできる限りの主張をしていけば、良い解決も可能であることを認識した事件でした。
契約更新拒絶でいただくご質問
Q1 会社の業績が悪く、どうしても雇止めをする必要があります。労働契約法19条の要件を満たしてしまったら、常に雇止めが許されなくなるのでしょうか。
A1
労働契約法19条の要件を満たす場合であっても、雇止めが許されるときもあります。例えば、やむを得ない事業上の理由により人員整理をする必要があり、配置転換する余地もなく、臨時雇用者全員を雇止めする場合などです。単に業績が悪いというだけでは、雇止めは許されないので注意が必要です。
Q2 従業員が継続雇用に対する合理的期待を抱いたら、どのような場合でも雇止めをすることができなくなるのでしょうか。
A2
いったん合理的期待が発生しても、それが解消されれば、雇止めできる場合もあります。解消するためには、会社側が、従業員に対して、企業の置かれた状況や雇止めに至る経緯などを充分に説明するなどの慎重な手続が必要とされます。
Q3 あらかじめ更新しないと告知しておけば、更新拒絶しても大丈夫でしょうか。
A3
単に一方的な不更新の告知をするだけでは、不十分です。不更新の告知だけでなく、更新手続きを厳格に行うなどして、有期雇用の実態を保つこと、従業員に誤った期待を抱かせないこと等が必要です。
Q4 このような条項を有効に機能させるためにはどうしたらよいでしょうか。
A4
更新手続きを厳格に行ったり、更新が前提となるような長期にわたる内容の業務をさせないこと等が必要になります。
Q5 あらかじめ雇用契約に更新回数や期間の上限を設けようと思いますが、このような条項を設けることに問題はありますか。
A5
こういった条項は不更新条項といいます。不更新条項を入れた更新契約を締結しさえすれば、常に雇止めが有効になるわけではないので注意が必要です。
Q6 1回しか更新してない場合でも、更新拒絶ができないときはありますか。
A6
1回しか更新していない場合であっても、更新手続きが形骸化していたり、雇用を継続することを期待させる言動を会社側がしていたりするときは、やはり更新拒絶ができない場合があります。
Q7 雇用が継続されるとの期待を抱くことに合理的な理由がある場合とは、どういった場合のことでしょうか。
A7
例えば、更新手続きが形骸化していたり、更新回数が複数であったり、雇用期間が数年に及んでいたり、業務の内容が正社員と同じであったり、雇用を継続することを期待させる言動を会社側がしたりした場合などをいいます。
Q8 労働契約法19条の要件とはどのようなものですか。
A8
①過去に反復して更新していることで、期限の定めのない雇用契約と同視できる場合、または②従業員が雇用が継続されるとの期待を抱くことに合理的な理由がある場合に、③従業員が雇用の継続を申し込んだことです。