契約書作成・チェックのQ&A

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”買主は、購入物の検収後1年以内に購入物に瑕疵を発見した場合は、売主に対して通知するものとし、売主は無償にて購入物の修補または代替品との交換をするものとする。但し、上記期間経過後であっても、購入物に重大な不良が発生し買主に損害が発生した場合は、買主はその損害を売主い請求することができるものとする。”との条項を含む契約を締結している。この条件下で、購入した部品(購入額1億円)が原因となって、発注側企業が製造・販売した家電製品が30年後に出火し,発注側企業は300億円の損害を被った。このケースにおいて、発注側企業は部品メーカーに対して300億円の損害賠償請求は可能か?通事故で、他人の車を壊してしまいました。特に人は怪我などしていません。このような場合でも、逮捕されることはあるのでしょうか。

この場合、争いがあるところで、はっきりしたことは言えませんが、通常は30年もの間責任を問われるということはありません。
まず、この契約の解釈として、「重大な不良」の場合、一般的な時効期間である10年を越えて、本当に保証したのかという点が問題になります。1年の短期の保証ではなく、通常の10年間保証したという風にも解釈できる可能性があると思います。それから、そもそも、30年もたった場合、発注側企業の責任自体消滅しているのが通常です。なぜなら、民法上の不法行為責任の場合、最長で20年しか責任は及びませんし、製造物責任法の場合は、製品の引き渡しから10年で時効だからです。発注側企業が責任を負わない以上、部品を提供した企業も責任は生じません。ただ、実務上は、このような問題が生じないように、どこまでの責任を、どの期間負担するのか、契約書に明確に記載する必要があります。

瑕疵担保条項にて請求できない損害額を,債務不履行にて請求できるか?

この点も、契約解釈の問題になると思います。瑕疵担保条項として、わざわざ契約書に一定の責任の取り方を明記している場合、当事者の意思としては、その他の債務不履行責任は排除するものとも考えられますし、単に一定の場合の責任の取り方を定めただけで、それ以外の債務不履行を排除しないものとも解釈できると思います。(ただ、一般的には債務不履行責任は排除されないとされる方が普通と思います)
従いまして、このような争いが生じないように、契約書において、どこまでが責任となるのか明確に定めておくことが必要となります。

期限の定めのない契約は、無効になるか?

期限の定めのない契約も有効です。雇用契約のように、期限を定めないでおくのが通常といった契約も多くあります。
ただ、このように期限の定めを置かない場合には、解約の条件などを契約書に明記して置く必要があります。
なお、仮に、解約の定めが契約書にない場合でも、一定の要件で契約は終了できると解釈されることになります。その意味で、期限の定めのない契約は、有効ではあるけれど、永遠に効力が認められるということにはなりません。

覚書を締結後、基本契約を締結したが、優先条項が記載されていない場合は、条項に相違があった場合、覚書と基本契約とではいずれが優先するか?

これも、当事者の意思がどうかということで解釈の問題となり、一概には言えません。一般的には、「後から出来た約束が優先する」という原則がありますから、そうだとすると基本契約が優先しそうです。しかし、「特別の定めは一般の定めに優先する」という原則もありますので、一般の定めである基本契約よりも、特別の定めをした「覚書」が優先するというのが当事者の意思だということもありえます。(通常は、後から出来た方が優先ということにはなるとは思いますが)
何にしましても、このような問題が生じないように、あらかじめどちらが優先するのかを明確にしておくことが大切です。

“売主は購入物を納期通りに買主の指定する場所に納入するものとする。買主は、売主が購入物を納期通りに納入できなかったときは、売主に対して遅延損害金を請求できるものとする。”との条項を含んだ基本契約を締結していた際に、どのサプライヤに対しても遅延損害金を請求できるか?

「遅延損害金」というのが、債務不履行による損害賠償のことでしたならば、当然にすべてのサプライヤーに対して認められます。
そうではなくて、損害賠償の予約として、一定の額を支払う旨予め定めておいたものだとしたならば、非合理な額ではない限り認められると思われます。
さらに、遅延損害金が「違約罰」であり、実際に生じた損害は別途支払うというものならば、そのような罰則は原則認められません。

質問の例の条文の場合、遅延損害金は債務不履行による損害賠償と解釈されるのか、損害賠償の予約として定めておいたものと解釈されるのか?

質問の例の場合は、損害金の額が具体的に決められていません。従って、この文章を解釈すると、法律的上の損害賠償が生じることを注意的に示したものに過ぎないと解釈されると思います。つまり、現実の損害があれば、その額が損害金となり、損害が発生しなければ、損害金の支払いは生じないことになります。損害賠償の予約とするには、具体的な損害金の額を条文に入れる必要があると考えます。