第56号 人事異動を巡るトラブルを防ぐには(3)

人事異動に関してのシリーズをお送りしています。前号は、異動のうち、「配転」について解説しましたが、今号は、配転が問題になった現実の事例(特に権利の濫用)を検討したいと思います。
就業規則等で「配転がある」と定めており、勤務地を限定する合意がなかったとしても、配転を命じることが権利の濫用になる場合、会社は、配転を命じることができません。
この点について、①業務上の必要性があるか、②不当な動機や目的があるか、③不利益が著しいかの3点から考えなさいというのが現在の判例です。
①が問題になるケースは、あまりありません。全く意味のない人事異動を行う会社は、ほとんどないからです。職場の空気をリフレッシュする、といったものでも問題ないでしょう。
問題は②と③です。②で多いのは、組合活動を嫌悪してのものであったり、退職勧奨を拒否されたことへの対抗としてのものです。非常に簡潔に言えば、その人をあえて狙い撃ちして、嫌がらせのようなことをすると違法とされる、ということになります。
そして、実際に最も多く問題となるのが、③です。最近では、育児介護休業法で、使用者への配慮が求められていることもあり、育児や介護での負担が大きいことを証明できれば、かなり労働者に有利な判断が出ることが多くなっています。育児であれば、子供の年齢や同居人の有無、介護であれば、介護認定等級や介護の種類など、具体的な事情から判断します。
また、法律上適法であっても、会社としては、従業員の士気や組織としての一体性も重要です。トラブルになるのは、現場の意見を聞かず、会社が一方的に出した辞令であることがほとんどです。当該従業員だけでなく、現場全体の意見も聞いた上で、会社の意向を示し、当該従業員が不服を述べた場合には、会社も譲歩して、代替案を提示することも有意義でしょう。配転の強行によって、他の従業員の忠誠心にも影響が出ることは、避けなければいけません。

次回からは、出向について解説していきます。

 新人弁護士のつぶやき

毎日暑い日が続きますね。あまりに暑いので、函館に行ってきました。夏の函館といえばイカですし、その他にも海の幸を堪能してきたのですが、今年の北海道は記録的な暑さということで、ほとんどこちらと変わりませんでした・・。3キロ太ったのはご愛嬌ということで。(文責:石﨑)